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 第10回大会のご報告

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説明的な文章−課題設定から迫る“わくわく授業”のつくり方
 「主体的で,対話的な,深い学び」を実現するためには,子どもがわくわくしてのめり込むような課題設定が必要です。そしてそれには,「子どもの問いと指導者の課題の差」に気づくことが重要だと青山先生は言います。子どもの意識に立って課題を作るとはどういうことか,具体的な教材を例に,考えていきました。

ワークショップの流れを紹介します。
「たい」と「とげ」を大切に  
「たい」と「とげ」を大切に
 「今日は,『たい』と『とげ』だけ持って返ってほしい」という青山先生の一言からワークショップが始まりました。参加者の表情に「?」が浮かびます。
 「たい」は,「○○したい」という子どもの意欲・関心。そして「とげ」は,「やりとげる」こと。この二つが実現するような課題を作ることが大切だと青山先生は言います。アクティブ・ラーニングで,「深い学び」を進めていくのは,子どもにとっても大変なもの。それをやり「とげ」るためには,大きな大きな「たい」を泳がせなければなりません。それでは,そんな課題を設定するには,どうすればいいのでしょうか。今日は,ときに模擬授業風のワークも挟みながら,子どもの気持ちになって考えていきます。

大きな『たい』ってどんなもの?



大きな『たい』ってどんなもの?
 
大きな『たい』ってどんなもの?
 そもそもあるべき課題とは何なのでしょうか。大切なのは,単元を通して意識できる課題であること。第三時なのに,子どもから「先生,今日は何をやるの」と言われてしまうのでは,ちょっと困りもの。前時からつながってくるような課題意識であることが必要だそうです。
 また,もちろん,説明文のねらい,読みの力の育成につながるものである必要があります。まずは,青山先生から,説明文の「読み」の系統,論の展開や文章構成などの解説があり,参加者はみな熱心に聞き入りました。
 加えて,アクティブ・ラーニングについて考えるうえで欠かせないのが「思考力」です。青山先生は,国語科で求められる思考力を「比較」「順序」「因果関連」「類推・推測」「具体と抽象」に分類しているそうです。その中で,特に重要なのが「比較」。説明文を読むときにも,友達の意見を聞くときにも,比較しながら考える子どもを育てたいということでした。

「比較し『たい』」を泳がせる




「比較し『たい』」を泳がせる
 
「比較し『たい』」を泳がせる
 それでは,「比較」につなげるためには,どのように課題設定をすればいいのでしょうか。教科書の課題そのままに「くらべてみましょう」とぶつけても,なかなか子どもは乗ってきません。青山先生は,「説明文を読む動機は,やっぱり知的好奇心。まずはこれを大切にしたい」と言います。だから,まずは,先生自身が「自分が子どもだったら」という目で教科書を読み,そのうえで,説明文のねらいにつなげていくことが大切なのだそうです。ワークでは,参加者どうし,「子どもの目」になって,発見したことを伝え合いました。
 「比較」につなげる工夫として,青山先生から紹介されたのは,「どうぶつの赤ちゃん」(光村・一年下)での本文の見せ方。本文を上下に並べて子どもたちに見せるというものです。すると,それだけで,自然と比較して考えることになります。また,一枚になることで,繰り返し出てくる言葉に着目でき,比較の観点とすることにもなります。子どもたちも,自分で発見したことは,喜々として発言するそうです。青山先生は,「どういうふうに見せるかによって,子どもの思考が見えてきます」とまとめました。

順序に着目させるには  
順序に着目させるには
 続いて,「比較」とともに低学年で重要な考え方,「順序」について,「どうぶつ園のじゅうい」(光村・二年上)を例に,考えていきます。子どもたちの興味は,もちろん「順序」ではなく,たくさん出てくるいろいろな動物,そして,獣医の仕事にあります。青山先生は,ここから「順序」に課題意識をもたせる工夫として,デジタル教科書の動画資料を見せるアイデアを提案。本文とは違う一日の仕事を見せることで,自然と順序に着目させることになるそうです。また,疑問もたくさん生まれます。疑問は議論するチャンス。教室のみんなが納得できる答えを導き出すことが大切です。

事例の順序を意識させる「書くこと」へのつなげ方



事例の順序を意識させる「書くこと」へのつなげ方
 
事例の順序を意識させる「書くこと」へのつなげ方
 中学年では,筆者の意図に基づく「事例の順序」を理解することもポイントです。そのときに,どんな課題が考えられるでしょうか。「すがたをかえる大豆」(光村・三年下)を例に検討していきます。この教材は,「書くこと」に生かす指導展開が定番となっています。これは事例の順序を考えさせるには効果的。ただ「書くこと」に苦手意識がある子どもにとっては,初めから文章を書くことを意識させることで,ハードルを上げてしまうことにもなります。
 青山先生は,まず,疑問詞を使って,題名から文章全体の「問い」を作ることから始めるそうです。そうすることで,子ども自身が課題をもって読み進めていくことにつながります。さらに,その疑問をみんなで解決していきながら,マップを使って整理をしていくそうです。「書くこと」と同じマップを使うことで,自分も書けるというイメージをもち,それが「書き“たい”」につながります。そしていざ自分が書くとなれば,自然と,事例の選び方,順序,写真の使い方など,筆者の工夫が意識されてくることになるのです。

「教えたいこと」と「知りたいこと」




「教えたいこと」と「知りたいこと」
 
「教えたいこと」と「知りたいこと」
 その他,「こまを楽しむ」(光村・三年下)では,思わず議論したくなる「立場が分かれる発問」のしかた,「天気を予想する」(光村・五年)では,資料に着目することから文章を読ませる工夫,「想像力のスイッチを入れよう」(光村・五年)では,題名の見せ方のちょっとした工夫で子どもを引き込むアイデアなど,明日から使えるワザをご紹介いただきました。
 いずれについても,重要なのは,教師が教えたいことと子どもが知りたいことには差があると自覚すること。青山先生は,「単元の中で,学習者の意識に立って課題を作っていくことが大切」と強調されました。
 ワークの中では,「みんなでいっしょにやることがとにかく楽しい1年生」「何でも文句をつけたがる反抗期の5年生」などなど,子どものリアルな姿が何度も話題に上り,参加者のみなさんも,「あるある〜」と自分のクラスを思い出しながら,青山先生のお話に聞き入っていました。どんな教材であっても,まずは子どもの姿を思い,その子どもの心で読んでいくことから始まる。そんなことを実感した120分でした。
【講師の先生のひとこと】
青山由紀先生  
青山由紀先生
 「読みの系統」と「課題」を意識していただくために,子どもになったつもりで模擬授業(風)にご参加いただきました。短い時間に入門期から高学年までの教材を扱ったため,まさに脳に汗かく「脳動的な時間」だったのではないでしょうか。ご協力,ありがとうございました。