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 第9回大会のご報告

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子どもの思考を育む物語文の授業 実践編
 子どもたちが「考えたくなる」のは,どんなときでしょう。それは,好奇心をくすぐられたり,違和感を覚えたりするときではないでしょうか。本ワークショップでは,文学的文章を取り上げ,子どもが「考えたくなる」授業を作るためのポイントについて考えるとともに,実際に教材研究をしてみることを通して,子どもたちに考えることを促す課題の作り方を考えていきました。

ワークショップの流れを紹介します。
「子どもが考える授業」を作ろう  
「子どもが考える授業」を作ろう
 今回のワークショップでは,「自分の考えの形成及び交流」に焦点を当てて,みんなで授業を作っていきます。講師の松木先生の,「児童にどう考えをもたせたらよいのか,どのようにめあてをもたせて活動に取り組ませるとよいのか。方法ありきではない,考える授業をどう作るかについて考えていきましょう。」というお話から,2時間のワークショップが始まりました。参加者の手元には,すでにいくつかの教材が置かれています。はやる気持ちを押さえつつ,まずは講師の黒田先生から実践報告をしていただきました。


子どもが考えたくなる授業のために  
子どもが考えたくなる授業のために
 「考える」とはどういうことでしょうか。黒田先生は,「正しい答えを出すことではなく,考える過程の中でその意味を見いだせたかどうか。」「子どもの好奇心に支えられたものでないと,本当に考えたことにならないのではないか。」とおっしゃいます。そのように「考える」を位置づけたうえで,どんなことを意識して授業を作ればよいのでしょう。黒田先生は,次の四つを挙げられました。
  • 問いを育てる
  • 違いを大事にする
  • 思考を揺さぶる発問をする
  • 育てたい力を吟味して,言語活動を選択する
 これらを踏まえ,「ミリーのすてきなぼうし」(2年上)の実践を紹介していただきました。対立意見で葛藤を生み,本気の話し合いを起こすこと,クイズ作りを通して文章に主体的に関わらせること,書く活動を取り入れてお話のよさを実感させることなど,考える必然性や,考えることが楽しいと感じられる実践を通して,「考えたくなる授業」のイメージをより深くもつことができました。
教材文に出会う  
教材文に出会う
 実践に学んだ後は,グループに分かれて,「子どもが考えたくなる授業」を考えます。
 はじめに,用意された「もうすぐ雨に」(3年上),「プラタナスの木」(4年下)を読み,一つを選んで,グループに分かれました。ほとんどの参加者が,どちらの教材も読んだことがなかったため,グループに分かれた後も,個々に,教材文を読んでは書き込み,前に戻ったり後ろに進んだりする姿が見られました。その表情からは,予備知識なく教材研究することの新鮮さと難しさを,改めて感じているようでした。松木先生と黒田先生は,その様子をそっと見守っています。限られた時間しかなくても,初めの段階で焦らない。それがまず初めに大切なこと,と言っているかのようでした。
授業を考える  
授業を考える
 しだいに,グループで話し始める声が聞こえるようになりました。子どもたちに考えさせたいことは,読んでいて自分が考えたこととも重なるようです。「自分は何に引っかかったか」「ここはどう解釈されるか」「その根拠は何か」「ここで押さえたいことは何か」など,読者の立場と授業者の立場で意見が飛び交い始めました。松木先生と黒田先生もグループを回り,助言をされ,いつしか教室はにぎやかになりました。
いよいよ発表  
いよいよ発表
 議論が盛り上がってきたところで,いよいよ発表の時間です。発表に先立って,松木先生から次のようなお話がありました。
 「二つの教材を読んでどちらか一つを選ぶこと,資料が何もない中で教材研究することは難しいことだったでしょう。しかし,子どもたちはいつもそうなんです。今日のみなさんより,もっと分からない状態で教材に取り組む。そんなときに,1時間目に『感想を言いましょう』『場面に分けましょう』『音読をしましょう』では,子どもたちはとまどいますよね。そういう子どもたちの気持ちを知ることは,とても大切なことです。」
 参加者は,45分という短い時間でこのことを強く実感したのでしょう。「まさにそうだ」という表情でうなずく姿があちこちに見られました。
 そんな条件で構想した授業計画。「もうすぐ雨に」は4グループ,「プラタナスの木」は3グループが,順に発表しました。同じ教材を扱っても,着目させるところ,発問で鍵となるところ,設定する言語活動に違いがあり,授業の可能性が広がりました。具体的な発問やワークシートの提案もあり,すぐに授業に使えそうなアイデアをもらうことができました。
終わりに  
終わりに
 各グループの発表の後,黒田先生と松木先生から,「自分の考えの形成及び交流」に焦点を当てた授業づくりのために,どんなことに気をつけたいかをお話しいただきました。
 黒田先生からは,授業者自身がもった感想を大事に授業をすること,おもしろいものは「おもしろい」,ぞくぞくするものは「ぞくぞくする」と言っていい雰囲気を作り,叙述に根拠を求めさせるようにすること,自分の経験と重ねさせること,短い感想でも認め,ほめてあげること,読み深めるところと読み広げるところを意識して授業すること,などのアドバイスをいただきました。
 松木先生からは,感想はみんなそれぞれ違うという前提に立ち,授業者が期待する一つの方向に向かって読ませるのではなく,たくさんの感想や考えから「なぜ」を見つけて考えていくことが大切だというお話がありました。
 実践の紹介やグループワークから授業作りのヒントをたくさん得ることができた2時間。その全体を通して,子どもたちが考えたくなる授業のために,まず私たち自身が考えることを惜しまないということの大切さを,改めて感じることができたワークショップとなりました。
【講師の先生のひとこと】
松木正子先生  
松木正子先生
 子どもが「考えることは楽しい」「分かる」と自覚できる授業づくりのために,先生方に考えていただきました。こちらの多大な要求に最初はとまどっていらっしゃるようでしたが,すぐにグループ内で話し合いが生まれていました。2作品を話し合っていただきましたが,さすがはこの会に参加されるほどの先生方。すぐにも使える教材の見方,指導の工夫を提示していただきました。同じ教材でもさまざまな観点からの提案があり,私自身「楽しい」時間でした。ありがとうございました。
黒田英津子先生  
黒田英津子先生
 考えたくなる授業作りをするには,教材研究が大切です。「読みのズレ」を見つけて,「問い直し」「思考のゆさぶり」を見つけるとよいと思います。
 例えば,「後悔」という言葉が,実は「感動」とつながっている場合もあります。言葉の中に潜んでいることを見つけることは,宝探しのようで楽しいことです。
 ワークショップでは,教材文が長く, 教材分析が大変だったと思いますが,「ありのままの自分」が文章とじっくり向き合う時間となったのではないでしょうか。
 授業作りの出発点を見た気がしました。