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 第9回大会のご報告

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その先の,もっと先まで
 アクティブ・ラーニングを取り入れた授業にゴールがあることは言うまでもありませんが,そのもっと先までを視野に入れることが,国語科におけるアクティブ・ラーニングを検討するうえで重要ではないでしょうか。第9回大会のまとめにあたって,他分野での技術革新と重ねながら,国語科の「その先」を考えてみたいと思います。
国語科の「目的」とは









国語科の「目的」とは
 
国語科の「目的」とは
 現在,私は,筑波大学で国語教育の教育・研究に携わると同時に,筑波大学の11の附属学校を一体として考えるとどのような新しい教育内容が創造できるかを考える役割を担っています。
 その一環として,附属学校の生徒たちと,ロボットスーツ「HAL」の開発者である筑波大学の山海嘉之氏が交流する機会があったのですが,生徒とのやり取りの中で山海氏は,「ロボットスーツの開発自体が目的ではなく,それによって目の前の社会的課題の解決にどう貢献できるかが,この研究の重要なポイントである」と述べられました。
 「目的」をどこに位置づけるかという点では,今年,ノーベル医学・生理学賞を受賞した大村智氏の話も,同じ仕組みをもっているように感じます。大村氏の新薬開発という業績はもちろんすばらしいことですが,本当に優れているところは,それを本当に必要とする人に届けるための手立ての開発に工夫を惜しまなかったところにあるのではないかと思います。
 これらを私たちの仕事に引き付けて考えてみますと,私たちは,子どもたちに言葉の力をつけることが最大の課題ですが,それは「手段」であり,言葉の力をつけて一体どんな子どもになってもらいたいか,子どもたちにどのような社会への参加者になってもらいたいかということが「目的」といえるでしょう。そして,そこまで見通して初めて,本当に身につけるべき言葉の力が見えてくるのではないかと考えます。
繰り返しながら変化していく国語の指導










繰り返しながら変化していく国語の指導
 
繰り返しながら変化していく国語の指導
 本大会の第1回大会で私は,国語教育論の38年周期説について語りました。今年,2015年の地点から38年さかのぼってみますと1977年になりますが,この年は,学習指導要領が告示された年でした。戦後の学習指導要領の中でも非常にユニークな特徴をもつこの学習指導要領の,一つの特徴として,「表現と理解の関連指導」が挙げられます。
 いっぽう,PISA調査が開始されるようになってからのことですが,2003年調査で日本の子どもの読解力の低下が問題視され,2005年には文部科学省から「読解力向上プログラム」が発信されました。そこで訴えかけられていることを大雑把にいうならば,「読み書き関連指導を工夫するように」ということです。
 こうしてみると,読み書き,表現と理解の関連指導の必要性は,繰り返し言われていることになります。しかし,かつてと今とで,同じことが求められているのかというと,関連のさせ方やその目的に大きな違いがあるということは,皆さんにも理解いただけることと思います。
 現在は,「読むこと」と「書くこと」を関連させること自体を目的化した実践はほとんど見られません。例えば,「しかけカードの作り方」という説明文を読んで,おもちゃの作り方のマニュアルを書く,「ウナギのなぞを追って」という説明文を読んで,科学読み物に関するリーフレットを作り,図書館に置くなどという学習があるとします。このとき,マニュアルやリーフレットの作成という活動が本当の意味をもつためには,午前中の鼎談にもありましたように,オーセンティックな場が用意される必要があるでしょう。そのような場で緊張感や喜びを経験した子どもには,読み書き関連学習の「読み」あるいは「書き」に対する取り組み方がより深まると期待されます。
まとめ  
まとめ
 私たちは,国語の授業を徹底的に見ることで自分自身を鍛え上げることがありますが,本日の記念講演の中村桂子先生のお話のように,普段とは違う視点のお話をうかがい,目線を変えて物事を考えることも大切だと感じました。
 さて,本大会は次回で第10回を迎えます。ここまで会が続いたことに,たいへんな感慨をもっております。第10回も,皆様とお会いできることを楽しみにしております。本日はどうもありがとうございました。