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 第8回大会のご報告

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語彙力を高める!
 今求められる国語の力として,「語彙力」を挙げられる方は多いと思います。では,その語彙力はどう指導すればよいのか。森山先生・達富先生は,語彙力には,「多くの語を知る」という量の問題(広さ)と,「より適切に使い分ける」という質の問題(深さ)とがある,と言われます。ワークショップ5では,その両方を高める語彙指導について学びました。

ワークショップの流れを紹介します。
「言語活動の充実」と語彙  
「言語活動の充実」と語彙
 豊かな言語活動のためには,語彙を知っていることが前提となります。その語彙の力を言語活動の中で伸ばす工夫について,音楽に関する例を森山先生がまずご紹介してくださいました。
 誰もがよく知る「蛍の光」。突然の歌声に会場が笑いに包まれる中,森山先生は2番の歌詞を優しく歌いながら,次々と分析していかれます。「かたみ」は形見ではなく,片身(お互い)。「ひとこと」は他人事ではなく一言。互いを思い,最後の一言「さきくと(お幸せに)」と願う歌。歌の意味を知るにつれ,会場はじんわり温かい雰囲気に。語彙の意味を理解することの大切さを実感したひとときとなりました。
語彙とは何か  
語彙とは何か
 続いて,語彙そのものについてのお話がありました。「白熊」と「白い熊」はどう違うか。「白熊」は一つの語だが,「白い熊」は二つの語の組み合わせで,「くまモン」に白い粉を振りかけても「白熊」にはならない。語彙的表現の明快な説明に納得です。
 「語彙」とは語の集まりのこと。言葉の設計図が文法で,材料が「語彙」,語彙は全ての基盤であると言われます。そして「茶髪」「人権」を例に,語ができて初めて概念ができるというお話から,語を知ることは概念を知ることでもあるのだと学びました。
理解語彙を使用語彙に  
理解語彙を使用語彙に
 聞いてわかる「理解語彙」を,使える「使用語彙」に活性化させるにはどうすればよいか。二人一組になり,「見る」という動作を表す言葉をいくつ挙げられるか,ワークショップが行われました。
 15個程度挙げたチームが1位でしたが,森山先生はなんと40個以上を披露! 目につく・見上げる・仰ぎ見る・眺める・見渡す・見交す・垣間見る・見つめる・にらむ・覗く・目をみはる・観察する・注目する・見過ごす……
 「大造じいさんとガン」も「ごんぎつね」も,「見る」という語に着目して分析するだけで,登場人物の立ち位置がわかる。作文を書くときに語彙の一覧を配るだけで,表現が豊かになる。語彙から学びが深まり広がることを実感しました。
語彙指導の取り入れ方

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語彙指導の取り入れ方
 達富先生からは,45分の授業をどう組み立てるか,語彙の学習をどこに組み込むかについて,具体的なお話がありました。
 単元として計画的に語彙指導を行う場合よりも,授業の中でアドリブ的に語彙指導につなげることのほうが実際には多いと思います。例えば生徒が何か読み間違えをしたとき,その瞬間に立ち止まるかどうかは,先生の語彙感覚によるところが大きいと達富先生はおっしゃいます。
 左の表は達富先生の「読むこと」の授業モデル案です。この中で語彙を高める学習のチャンスは,「3」の情報の取り出し,「5」の点検・読み直し,「6.2」の書き直しの段階にあると言われます。
 授業を組み立てる際の有効なヒントに,先生方も真剣に聞き入っていらっしゃいました。語彙指導のきっかけは授業のあちこちにあり,指導者側自身の語彙感覚を普段から磨いておく必要があるのだと感じました。
はがき新聞で多様な語彙学習を  
はがき新聞で多様な語彙学習を
 後半は,メタファー・メトニミー・共感覚表現・撞着法など,多様な表現方法についての説明を聞いた後,「コンパクトに相手意識をもって書く」例として,はがき新聞を使った活動が行われました。簡単な枠を設け,「愛」という語の説明をしたり,詩や俳句を創作したり,教材内の「見る」という語の使い分けを分析したり……
 コンパクトなはがき新聞を使うことで,段落意識をもって書くことができ,思考力が高められます。語彙学習は実にさまざまな展開ができることを具体的に学びました。
語彙を使えた経験を共有する  
語彙を使えた経験を共有する
 最後に,達富先生から「ごんぎつね」をもとにした語彙の指導実践についてご紹介いただきました。生徒が語彙に立ち止まり,自分なりに分析している様子,それをクラスで共有してさらに学びが広がっていく様子が伝わってきました。
 語彙を使えた経験をさせ,その使えた語彙を見せてクラスで共有する。「語彙を使えた共体験」をすることが大切という言葉には深く納得しました。さまざまな角度から語彙について考え,言葉の奥深さと魅力にどっぷり浸かった2時間でした。
【講師の先生のひとこと】
森山卓郎先生  
森山卓郎先生
 今回,「語」をめぐるさまざまな問題を一緒に考えていただきました。ご参加のみなさまの語彙の豊かさ,深さに支えられて,「ことば」にしっかり向き合うことができました。時間が少し足りなかったのが残念ですが,いろいろな実践を開発していただき,これからも交流させていただければ幸いです。(この文章は和語58語,漢語11語,一文の平均字数は46.3字,平均語数は26.7語?……
達富洋二先生  
達富洋二先生
 「語彙力を高める授業」にまつわる多様な課題を共に考えていただきました。ご参会の方々の興味の深さ,広さに刺激を受け,「授業」とクリティカルに対峙することができました。森山語彙論に支えられた達富授業論を紹介できて気分はうきうきです。このワークショップをはじまりとして,これからも「語彙の授業づくり」について共有させていただければフーガのような感動です。(この文章と森山文章を比べてみると,対義語,類義語,連想語,語種,オノマトペによる書き換えがたくさんです?……