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 第8回大会のご報告

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なぜ国語の授業は楽しくないのか 国語が好きな子どもを育てる授業とは
 学習指導要領における国語科の教科目標には,国語に対する関心や認識を深め,生涯にわたり自らを向上させる力としての生きる力を育成することが求められています。これらのことから,国語の授業では,喜んで文章を読んだり書いたりする子どもを育てることが必要だと思われます。ところが,国語が嫌いな児童生徒は,学年が上がるにつれて増加する傾向にあります。私たちの授業が,国語の楽しさを十分伝えていないのでしょうか。
 これからの国語の授業はどうあるべきなのでしょうか。国語が好きな児童生徒を育てる魅力ある授業の在り方について,三人の有識者が議論を展開しました。
国語嫌いの児童,生徒が多いのはなぜか


国語嫌いの児童,生徒が多いのはなぜか


図1
  【図1】
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図2
  【図2】
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図3
  【図3】
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国語嫌いの児童,生徒が多いのはなぜか

田中 先生方の声を聞くと,子どもたちが国語の授業に十分満足していないのではないか,進んで読み,進んで書くという気持ちが育っていないのではないか,と感じていらっしゃる方が多いように思います。
 お二人の先生に,まず子どもが国語をどう受け止めているのか伺いたいと思います。

冨山 全国学力・学習状況調査の結果を見ると,数値的には小学校から中学校になるに従って,国語が嫌いになる割合が増える傾向はそんなに大きくありません。
 「国語の勉強が好きか」という問いに対して,おおむね6割の子どもたちが国語が「好き」「まあまあ好き」と答えています。【図1】
 「国語の勉強は大切か」という問いでは,9割近くの子どもが「そう思う」と答えています。【図2】
 なぜ9割の子どもが「大切だ」と思っているにも関わらず,「好き」の割合が低くなっているのか,というところを先生方は考えていかなければならないと思います。
 また,「国語の授業で,目的に応じて資料を読み,自分の考えを話したり,書いたりしているか」,すなわち「主体的・能動的な学習をしているか」という問いでは,年を追うごとに肯定的な回答をする子どもが増えていることがわかります。この結果を見ると,国語の授業の形態が変わってきているんじゃないかということがうかがえます。これは,学習指導要領で,「言語活動の充実」を前面に出した成果と受け止めてもいいと思います。【図3】

岸田 横浜市の小学校でも,全国学力・学習状況調査と同じような調査をしています。その中の,「国語の授業は好きですか」という問いでは,1年生はほとんどの子どもが「好き」と答えています。しかし,学年が上がっていくにつれて,どんどんその割合が少なくなっています。ただ,それが国語に限ったことではなく,学習そのものに対して「好き」の割合が低下しているのです。
 国語についていえば,「国語=漢字」というイメージが子どもの中に強くあります。教師は楽しい学習にしようと思ってキャラクターなど使って工夫をし,子どもも喜んで授業に参加しますが,それが「国語が好き」に直結するわけではないんです。漢字も好きにはなりません。それは単純なことで,覚えることが大変だからです。言語活動を取り入ることも同様で,それがそのまま国語好きにはつながっていないようです。
 つまり,「楽しい」と「好き」はストレートにつながらないのです。言語活動の選び方や,「国語=漢字」といった意識を変えていくことが必要なのではないかと思います。やはり「新しい発見のある授業」が大切で,低学年が国語を好きなのも,それがあるからではないでしょうか。

田中 低学年の教科書は目新しい要素がたくさん入っています。新しい発見がたくさんありますね。しかし,小学校中学年から高学年になると,教わる前から教科書がすでに読めている状態なのですね。例えば「大造じいさんとガン」(5年生)も,ほとんどの子どもが一読後に,面白かったところや感動したところをつかんでいます。つまり国語の授業をやらなくても読めているのに,そこで5〜6時間かけて授業をすることで,子どもたちに何か新しいものを見出させいるのか,というところに問題がありそうです。
実際の授業での課題


図4
  【図4】
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図5
  【図5】
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図6
  【図6】
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実際の授業での課題


実際の授業での課題
 
実際の授業での課題

田中 実際の国語の授業の中で,今どんなことが課題となっているのでしょうか。

岸田 やっぱりまだ国語科の学習の中で言語活動がきちんと位置づいていないものが多いですね。意識の高い先生の授業は,言語活動を位置づけて子どもに主体的な学習を行わせていますが,そうした授業は少ないというのが実感です。説明文を読めば,形式段落に番号を振り,意味段落に分け,何が書いてあるかを逐一尋ねていく。物語を読めば,人物の気持ちの追求ばかりがなされている。何のためにそれらの学習をやるのかが,子どもたちにわからないままに進んでいます。それが一つの大きな課題だと思います。
 もう一つの課題は,言語活動の取り入れ方です。例えば「全文を対象にした読み」「並行読書」「交流」などという言語活動をただ単に形としてだけ取り入れているのではないかということです。なぜそれを行うのかということが教師が理解できていないままにやってしまっているケースが多いのではないでしょうか。
 全文を一枚のシートに収めて読ませるのは,いろいろな言葉の結びつきがよく分かり,それが交流につながっていくのだという「学び方」がきちんと押さえられた上で取り組むことに意味があります。【図4】
 「交流」も,ただ一人一人が発表するだけで終わるものが多いようです。きちんと交流させるためには,「返し方」の型をしっかり学ぶ必要があります。【図5】
 また,なんのために交流するのかという目的意識が,子どもたちの中にないままに行っていることも問題です。【図6】

冨山 中学校でも,ずっと先生がしゃべって,先生が黒板に書いたことを生徒がノートに写すという授業が相変わらず多いようです。ノートに取ったことを覚えて,それがテストに出て,いい点数が取れればよしという流れですね。私は,そういう一斉指導や教え込みを全面的に否定しているわけではありません。それが必要な場面ももちろんありますから。しかし,やはり子どもが活動していく場面が増えなければ国語が好きになっていくことは難しいかなと思っています。
 もう一つは,国語は何ができたらいいかということをはっきりさせていないということです。教科書教材は学ぶけれども,それが日常の読みへの力につなげていくことができないのです。

田中 小学校に比べて,中学校ではまだまだ言語活動を取り入れていない傾向が見られますね。その原因は,昭和30年以降,上級学校への入試ということにずっと引っ張られてきたことが大きな原因でしょうね。結局,学力というのがペーパーテストにおける偏差値とみなされていたことです。それが教え込み型授業につながっていきました。しかし,それでは知識は増えるけれども,読み書きの力とつながっているというとたいへん怪しい。これは日本の教育の大きな課題としてあったわけです。
 今回の学習指導要領で,言語活動の充実ということが打ち出されたのは,そういう背景があったからなのです。ただ,冨山先生のお話のように,知識を習得することも必要です。また,岸田先生のおっしゃるように,言語活動をただ形だけ受け入れていくだけでもだめだということです。
 冨山先生,岸田先生は,課題のある授業を見たとき,どんなアドバイスをされますか。

冨山 教え込み型の授業をされている先生に対しては,発問した後にすぐ先生自身が答えを言うのではなく,5つ数えるくらいの余裕をもって,生徒に考えさせる時間を確保させてくださいとお願いしています。

岸田 例えば「ごんぎつね」を,ごんと兵十の気持ちばかりに焦点を当てた授業をしている先生には,「先生は『ごんぎつね』を詳細に読み取れる子どもを育てたいですか。それとも南吉の他の作品を読みたいと思う子どもを育てたいですか」と問いかけています。

実際の授業での課題  
これからの国語の授業で大切なこと

田中 音楽と国語を比べると,音楽は授業で学んだことが実生活と結びついていることが多いですね。国語でも子どもたちの読書生活を豊かにするような授業の工夫が考えられるでしょうか。

冨山 例えば話題になった政治家の演説など,実社会にあるものは子どもの興味を引くと思います。その読み取り方を国語の授業と結びつけるということは考えられますね。
 中学生の読書傾向を見ると,漫画のノベライズを読むということがあります。国語の定番教材と漫画のノベライズをつなぐような工夫があれば授業が活性化すると思います。

岸田 小学生は,学習したことをすぐに使いたいと思う子どもが多いんです。例えば並行読書で取り入れた作品を,学習が終わった後も継続して読んでいくことが増えています。しかし,学習で使ったり,紹介してやったりしなければなかなか手が届かない所も多いです。

田中 古典の学習でも,原文の解釈だけで終わるのではなく,現代語訳だけでも少し多めに教材として取り上げ,魅力に触れさせておけば,ジュニア向けの古典の本などを読みたいという意欲が湧くと思います。そういう授業の工夫も考えていきたいですね。
 国語の目指すところは,学習指導要領にもありますが,なにより自分の生活を豊かにするために,必要に応じて書いたり読んだりできる力をつけることだと思います。そういう子どもを育てるためには,どんな指導が必要になってくるのでしょうか。
















図7
  【図7】
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図8
  【図8】
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  冨山 情意的な部分と技能的な部分を両方しっかり押さえることが必要です。国語の指導で伝統的に行われてきた実生活での応用力ということは,これからもますます大切になってくると思います。情意的な部分でいえば,混沌としてくる時代の中で,特に話すこと,話し合うことといったコミュニケーションの力は重要です。それを授業の中に組み込んでいかなければなりません。
 一方で,学習するために必要な持久力をつけることも必要です。そのために,パソコンに頼り切りになるのではなく,手書きの文章を書かせていくなどしっかりやっていかなければなりません。それは技能の面全体に通じることでしょう。

岸田 小学校の強みは,学級担任であることだと思います。国語の学習と,他教科や日常生活との関連が簡単に図れるのです。それを意識していくことが大切です。
 また,常に教科書の整った文章だけに出会わせるのではなく,日常生活にはさまざまな文章があるんだということを意識させ,目的的に読むことをさせるのも大切です。【図7】

冨山 活発な授業を見ていると,先生が教科書の教材を目の前の子どもたちに合わせてアレンジして使っています。例えば,「おくのほそ道」では,地元の記述があれば,それを教材化して授業をするなどの工夫です。

岸田 子どもたちが楽しいと思う授業は,目的が明確で,自分のやりたいことの幅が広がっていくと実感できるものだと思います。例えば何かを調べる学習では,多くのものから,自分の目的に合わせて選ぶチャンスを与える授業をしていくことが大事です。【図8】
まとめ〜授業改善のキーワード  
まとめ〜授業改善のキーワード

冨山 「楽しくて力のつく授業を」。私が考えている「楽しい」とは,生徒が課題意識をもてて,それを解決した満足があるということです。「力がつく」とは,他の文章や題材に応用することができることだと思います。

岸田 「学校全体で継続的に取り組むこと」。1年生のうちからきちんと言語活動を位置づけた学習を積み重ねていくことが大切だと思います。

田中 「知的好奇心を刺激する授業」。結論は簡単に出なくても,何か不思議だと思ったり,ずっと考え続けられるようなテーマこそが,子どもたちの知的好奇心を刺激します。そして,それを真剣に考えながら解決したときには,知的成就感が味わえる。そんな授業こそが本当に国語を好きにさせることにつながると思います。