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 第8回大会のご報告

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「なぜ」を大切にする国語の授業
 国語科の教科内容とされる言語に関する知識や技能はとても大事です。漢字の知識,スピーチのしかた,報告文の書き方,図書館の使い方等々。しかしそうした知識や技能を学習すれば,思考力は育まれるのでしょうか。もちろんそうした表現のツールを身につけることは思考力を支えることにはなるでしょう。しかし考えることそのものはどうでしょうか。本基調講演では,そうした疑問から,学習者が「なぜ」と問うことの意味とともに,教師自身の「なぜ」と問うことの価値について,考えてみたいと思います。
国語科における言語活動とは?












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国語科における言語活動とは?












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国語科における言語活動とは?
 本日は,「『なぜ』を大切にする国語の授業」ということで,楽しく関わる言語活動の授業をどう作るかということを大会テーマとしております。国語の授業が,単なる知識や議論の練習に陥りがちになっていないか,あらためて,「なぜ」ということの必要性と,「考える力は,どう育つのか」をということを考えてまいりたいと思います。
 言語活動の充実ということが盛んにいわれてきて。多くの実践がなされてきました。多くの現場では,言語活動を充実させるために,どういう力をつけていくのかということを,一生懸命お考えで,それを言語活動の中に組み込んでやってらっしゃると思います。ただ,一方で,子どもたちは,本当に学習を楽しんでいるのかということですね。それから,先生方から,こういう授業やってみたのだけれど,本当に子どもに考える力ついているのだろうか。それはよく分からないというようなこともうかがいます。
 私は,まず,「考える力」という観点から,「なぜ」というキーワードと結びつけながら,少し考えてみたいと思っております。
 いわゆる,これは言語活動のイメージ図です。私が勝手に作ってるものですが。まん中にある言語活動。例えば,報告でも発表でも,スピーチでもいいのですけれど,それを成り立たせている知識や技能といったものがあります。そこに,適切な状況や場を設け,話題題材も適切なものを用意すると,単なる外的,物的な活動ではなくて,精神的に充実した経験になっていく,というイメージです。
 これも去年もお話しさせていただいたかと思うのですが,そういう授業をするときは,ただ単に言語活動をするというイメージではなくて,その中でどんな知識や技能を身に付けさせていくのかっていうことのために,例えば,指導要領3年生,4年生のところにあります,「話すこと・聞くこと」の,アの系列の指導事項ですけれど,こういうものを,ただ,まとまりとして見ていくのではなく,具体的にしていくために,まず三つぐらいに分割してみるのがいいのではないかと。
 こうやって並べてみると,学年による違いが,ある程度あるということが分かります。
 例えば,「要点をメモすること」というのがあります。教科書には,必ず学習の場があるわけですけれども,ここをうっかり飛ばしてしまいますと,もしかすると,要点のメモってのが,5,6年生教科書で扱わない場合もあるでしょうから,そうしますと,学習しないことになってしまいますね。ということは,この3,4年生のところはすごく大事だなっていうのが,見えやすくなるというようなことがあるだろうと。このように見れば,指導事項のどういうところに重点があるか,ということが,一つ見えやすくなるということがあります。さらに,具体化するために,分析する。例えば,「関心のあることから話題を決める」とあります。関心のあることって,3,4年生にとって何だろうということですね。そういうことが,ある程度,具体的に見通してきたい。目の前の子どもたちに,ぴったりの話題って何だろうっていうことですね。そういうことを具体的に授業のイメージの中に盛り込んでいくために,具体化する。そのために分析するということですね。
 それで,指導事項を分割したレベルが,技能レベル。そして,これを具体化した部分を道具レベルと,これツールボックスといってますが。こういう,道具をいっぱい子どもたちが身に付けていって,例えば,小学校6年生になったら,自分たちで,ポケットからいろんなものを出して,卒業時期にこんな文章書けるとか,こんな発表ができるというように,実際に使えると。また,中学校3年生は,中学校3年生なりに,そういうことができると。そういうふうになっていると理想的なのではないかなと,そういうイメージですね。

学習の場や状況がパッケージ化されていることを考える 画面をクリックすると別ウィンドウがひらきます。  
学習の場や状況がパッケージ化されていることを考える
 こういうふうにして,言語活動に具体性を持たせて授業づくりをしていくということが大事なのだということを,ずっと申し上げてきております。こういうことは,先生方もかなり意識的に指導されてきていると思います。ただ,そこにありますように,パッケージって書きましたけれども,教科書も一つのパッケージ。単元も一つのパッケージ。それから,別に教科書を使わなくても,一つの単元を組むと,ある意味でのパッケージだと思いますが,つまり,案内されて,もう次ここですよというところまで全部連れてかれるわけですから。迷わないことになります。で,迷わないと,そこに多分何の学びもないのではないかと。パッケージになってるようなものを学習すると,なんも考えないで,言語活動の技術だけを身に付けてクリアしていくということで,続けていっているだけにすぎないということもいえるのではないかと思うんです。  そこで,もう少しこれを考えるということが必要だと思っています。

そこで,ふたたび,絵本「絵くんとことばくん」  
そこで,ふたたび,絵本「絵くんとことばくん」
 これは,去年もご紹介し,使ったものです。去年もいらしてくださった方には,繰り返しになって申し訳ないのですが,『絵くんとことばくん』という,天野祐吉さんの絵本です。要は,ポスター作って,なんか交渉事する言語活動ですね。

 〜絵本「絵くんとことばくん」より内容を引用。〜

言語活動の質を高めるために,国語が何をなすべきか










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言語活動の質を高めるために,国語が何をなすべきか
 私たちは,ともすると,「こういう形で」というふうに,形を与えたところで,「これをまねしていきましょう」ということが多いと思います。それから,文章を,始め,中,終わりで書きましょう。と。もちろん,それ全部否定するわけではなく,そういうこともあっていいのですが,こういうことばかりやっていくと,子どもたちは次,どんな形,形式にすればいいとか,誰が相手なの,みたいな,非常に軽いノリになっていってしまう危険があるのではないでしょうか。
 やはり,活動する中で,子どもたちに,どこをいちばん考えてほしいかという考える場を設けていかないと,本当に知識を身に付けてクリアしていくだけになっていってしまう。
 だから,そのときに,大事な問いの一つが,「なぜ」「どうして」「どうやったら」というような,問いを子どもたちの中に,見いださせる。そういう場が必要なのではないかということです。
 レベル1というのは,とにかく指導要領にある言語活動例を取りあえずクリアしていくみたいな場面だと思うんですね。それに対して,レベル2になると,相手や目的のことを考えて,より効果的な方法を身に付けるような活動になる。レベル3ということになれば,表現の仕方だけ身に付けてもだめで,その仕方を考えるプロセスでの試行錯誤ということになる。なぜ,どうして,どうやったらという,そういうことを考えていく場面。そういうものが,子どもたちの考える力を育てていくのではないかと思います。
 言語活動というところからもう一歩踏み込んで,言語活動の質を高めるためには,国語として何をすべきか。そのときに,「なぜ,どうして」ということを,考える。そういう場面が必要になってくるのではないかということです。

言語活動の「富士山モデル」 画面をクリックすると別ウィンドウがひらきます。
 
 
 
 
言語活動の「富士山モデル」
 
 
 
 
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言語活動の「富士山モデル」
 いろいろな試行錯誤をしてできるようになったことが,上の白い部分だと思ってください。初めから白い部分だけ与えられても,その中から,広がっていかないというか,いろいろな経験がないので,ただやり方を覚えるだけになってしまいます。広い,いろいろな経験や,失敗,そういうものがあって,あるときにできるになったものというのが,本当の力になってくのだろうと思いますね。
 そういう経験を重ねるプロセスのところが,富士山の裾の部分。そこが,まだできるようになっていないかもしれませんが,何度かそういうことを経験していく。そして,それがやがて白い,確実に適切に使える技能というところに上がってくのだろうと考えています。
 まとめになりますが,言語活動の学習におきまして,知識技能身に付けることは,必要な知識として,大切。絶対必要なんですね。しかし,いつもその道具を与えられるだけでは,考える力は育まれないんじゃないか。何のために,なぜ,どのように,などの問いを持ちながら,道具そのものを考えだして,活動を問い直している。そういう試行錯誤や失敗のプロセスがとても大事ではないかと。
 そして,先生方は,その試行錯誤や失敗をさせたことを,今後整理して,意味づけてあげる。その失敗には意味があるねっていうことを,教えてあげられるのがいいのではないかと思います。
 あることまでできるようになったら,今度は,子どもたちに応用として考えさせるならば,一つの単元の中でもここは自分たちで考えさせてみようというような時間ですね。そういうものを組み込むことによって,単なるスキルのトレーニングではない充実した言語活動の学習につながっていくのではないかと思っております。
 本日は,「なぜ」ということを思考力,あるいは,考える力ということと絡めてお話をさせていただきました。
 どうしたら,国語の時間が楽しく,もちろん楽しいだけではなく,楽しいからこそ,力がつく。そういう国語の時間がつくれるかということを,きょう一日,いろいろな角度から先生方,皆さんと一緒に考えていければ,と思っております。どうもありがとうございました。