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 第6回大会のご報告

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言語活動と三つの力―目標の構造化の視点から
 言語活動の評価について,評価規準・基準などさまざまな挑戦が行われていますが,目標や評価をどうデザインするかについて,これまでの議論を踏まえながら話をしてみたいと考えています。
大村はま氏 単元「国語学習発表会」の展開  
 
 
大村はま氏 単元「国語学習発表会」の展開
 
大村はま氏 単元「国語学習発表会」の展開
 大村はま氏は教科書を必ずしも用いず,言語学習を中心とした単元学習を遂行しています。そのうちの単元の1つとして,「国語学習発表会」(『大村はま国語教室』第2巻)があります。昭和47年の話になります。独特なのは,45時間,約2か月半をかけているところです。その内容をまとめますと,全部で4次に分けることができます。
 第1次は,「国語学習発表会」とはどういうことをやるのか,グループはどう分かれるのか,ガイダンスを教師が中心に行います。
 第2次は,「国語学習発表会」で発表する内容を,グループごとに検討します。発表の課題は,主に2つが挙げられています。1つは,日本・中国・韓国の昔話を比較する,もう1つは,自分たちの読書傾向を調べるというものです。
 第3次は,調べたことを発表する練習をし,そして,実際に発表します。
 第4次は,発表された内容についてクラスで話し合います。
この全4次に,45時間を費やしていたのです。その間,教科書は取り上げられていません。しかし,公立中学校ですから,中間テスト,期末テストは行われたわけです。
交流と読書共同体  
単元「国語学習発表会」と定期テスト
 では,大村氏は,定期テストでどのようなことを問うたのか。期末テストでは,漢字,文法,語句の問題の他,説明的文章(貨幣の増産に関する文章,鉛筆の種類と特徴についての文章)の要点を読み取る問題が出題されています。物語は,電車の中の情景を描写した文章について,主題や人物の心情が問われています。
 しかし,これらの問題は,「国語学習発表会」の授業で全く触れられていないのです。授業で子どもたちが経験していないテキストが提示され,教師が教えたというわけではないことが問われている。私には,「国語学習発表会」の授業と,定期テストの問題の間に乖離があるように思われました。
 しかし,大村氏が「国語学習発表会」で行われていることを評価する重要な手段として,テストを生かさなかったはずはないと私は考えました。
読書共同体の広がり

 
大村氏 単元「研究発表」(昭和20年代)での考え方
 大村氏は,「国語研究発表会」の授業と定期テストとのつながりをどのように考えていたのでしょうか。
 ここで,昭和20年代に遡りたいと思います。大村氏は「研究発表」という単元を展開していますが,そこで,理科の研究発表の際,子どもたちの発表が生き生きしていない,書いてきたものに引きずられ,顔を上げて話せない,自分で調べてきたはずなのに,読み方や言葉の切り方を間違えるといった状況に直面します。
 そこで,大村氏はどう考えたか。大村氏は,言語活動に関して我々が理想とする姿,つまり,生き生きとしゃべる,生き生きと発表する力は,さまざまな複合的な力を国語科の中で十分に養わないと身につかないと考えたのです。
読書共同体の広がり  
 
 
読書共同体の広がり
 
大村氏における「目標の構造化」
 昭和20年代の大村氏の問題意識を踏まえ,昭和47年の「国語研究発表会」の実践に立ち返ってみます。
 「国語学習発表会」で,読書傾向をまとめる取り組みの際,子どもたちは自分たちの読書傾向をまとめるために,さまざまな文献を読み,それらを発表原稿にまとめ,その発表原稿をもとに発表することが求められています。ここでは,読書に際して的確に要点を捉え,要約できなければなりません。あるいは,自分自身の経験や意見と照らし合わせて,論説文の趣旨を提示する必要があります。
 また,日本・中国・韓国の昔話を比較するときには,あらすじをどのように捉えるか,昔話がどのように書き始められ,どのように結ばれているかなど,物語の読みの観点を身につけることを子どもたちは求められています。
 子どもたちは,単元「国語学習発表会」の中で,以上のような学習を経験してきているはずです。したがって,定期テストで説明的文章の要点や物語の主題を問うことは,整合性のある評価の仕方であると,大村氏は考えたのではないかと私には思われます。それをここでは,「目標の構造化」と呼びます。
 「生き生きと話す」を目標とするならば,「生き生きと話す」を支える力は何かということについて考える,このことが昭和20年代・昭和40年代の大村氏の思考活動ではなかったかと考えます。
 「生き生きと話す」をひとつの理想として考えたときに,「さあ生き生きと話しなさい。」と言うだけではいけない。具体的にどのように話すことが生き生きと話すことにつながるのかを考えなければなりません。ある力を支えている力はどういうふうなものなのかを探求する視点がなければ,教師は「生き生きと話せ」という無力な言葉を繰り返すしかないわけです。
読書共同体の広がり  
 
 
読書共同体の広がり
 
これからの課題
 昭和20年代半ばに,倉澤栄吉先生が『国語単元学習と評価法』という本を出版されました。その中で,(「国語単元学習」を「言語活動」と言い換えて読めば,)言語活動を評価する際,その評価する領域は,計画・活動・探究・責任・技術・反省など,多岐に渡るとおっしゃっています。今日我々は今申し上げたような領域において,どのように考えれば「生き生きと話しなさい」という抽象度の高い指導から逃れられるのかについて探究する必要があると思うのです。
 「みんなで仲良く研究しなさい」と言うだけでは,みんなで仲良く研究することはできないわけですね。
 「協調性をもって発表しなさい」と言っただけでは,協調性をもって発表することはできないわけですね。
 以上を,目標の方法化,言語活動をデザインしようとする我々にとっての課題であると考えて,第6回の結びの言葉とさせていただきます。