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 第6回大会のご報告

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文学作品で育てる読みの力とその系統性・中学校編
 本講座では,文学作品がもっている「読みの力」について考えます。前半はお二人の講師のお話を中心に,後半はフロアの先生方からの質問に答えるかたちで,文学作品で育てる読みの力や,その系統性について考えていきます。

ワークショップの流れを紹介します。
自分にとってNo.1の文学教材は?  
自分にとってNo.1の文学教材は?
 まずはアイスブレーキング。フロアの先生方に4〜5人のグループを作ってもらい,「自分にとってピカイチの文学教材は何か」について,話し合ってもらいました。初対面にも関わらず,好きな文学教材について熱く語る先生方。「大人になれなかった弟たちに……」,「高瀬舟」などの教材名が挙がります。
 藤森先生は,「先生方が挙げられた教材に共通することは,何回読んでも新しい発見があること。そして,さまざまな読み方ができて,想像しながら言葉を紡いでいくことができること」であると話し,「文学作品を教えることは,国語教師の醍醐味です。文学作品で育てる『読みの力』とは何か。いっしょに考えていきましょう」と投げかけました。
「少年の日の思い出」をめぐって  
「少年の日の思い出」をめぐって
 
「少年の日の思い出」をめぐって
 藤森先生はまず,「少年の日の思い出」(1年)を使った,A先生の実践を紹介しました。
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 「少年の日の思い出」は,成人した「僕」が客として,「わたし」に昔の思い出を語るという形式をとっています。A先生は「『わたし』が客にどのような言葉をかけたか」について,生徒たちに話し合わせました。最初は「話してくれてありがとう」「そうだったのか」という言葉で括ってしまう生徒が多かったのですが,話し合いを重ね,読みが深まれば深まるほど,「言葉にならなかった」と,考える生徒が増えていきました。
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 このエピソードから,藤森先生は「すばらしい文学作品は,心にしみる要素が美しく埋め込まれていて,言葉でうまく表現できないことがある」と話し,「その言葉にできない部分を言葉で考えていくことで,読みが深まっていくのではないか」と続けました。
 
「美しい論理力」とは
「美しい論理力」とは
 そして,藤森先生は,「私は,文学作品を考えるときに,『美しい論理力』を提案したいと思っています」と話し,スライド(左参照)を見せながら,「美しい論理力とは何か」について,丁寧に説明していきました。フロアの先生方は静かに聞き入り,熱心にメモをとられていました。
 最後に,「文学作品を,『美しい論理力』で,言葉にして考えていくことで,いろいろな発見が出てくることでしょう。ぜひ生徒といっしょに文学作品の読みを深めていってください」と締めくくりました。
まず「語彙力」を  
まず「語彙力」を
 そして,甲斐先生にバトンタッチ。「言葉の力をつけている人が,文学の美しさに出会えます」と,甲斐先生は切り出しました。
 例えば,「故郷」(3年)に,「(ルントウが)うやうやしい態度に変わって」という表現がありますが,ここで,生徒たちが「うやうやしい」という言葉をきちんと理解していないと,ルントウの気持ちをきちんと理解することはできません。つまり,「うやうやしい」という言葉を知らないと,「故郷」という作品の奥深さに出会うことはできないのです……と甲斐先生は説明しました。
 「読みの力をつけさせるためには,語彙力が必要です。二つの力は両輪のような関係なんです」。
「読みの力」をつけさせるために  
「読みの力」をつけさせるために
 そして,生徒に「読みの力」をつけさせるために,甲斐先生が行っている実践を紹介しました。語彙力をつけるために,教材文に出てくる言葉を使って100字程度のお話を作る「言葉の小劇場」や,物語のあらすじをつかむ力をつけさせるために,「桃太郎のあらすじを10字で書く練習」など,甲斐先生の楽しい実践に,フロアの先生方から笑みがこぼれます。
 また,「星の花が降るころに」(1年),「走れメロス」(2年),「高瀬舟」(3年)の授業実践を紹介し,各学年でどのように「読みの力」をつけていけばよいのか,そして,その系統性について説明していきました。
質疑応答  
質疑応答
 最後はお二人への質問タイムです。フロアからは次々と手が挙がります。現場の先生方のさまざまな質問に,藤森先生と甲斐先生は,具体例を出しながら,丁寧に回答をしていきました。
 文学作品の奥深さや,文学作品を教えることのおもしろさなど,さまざまな示唆を得られた二時間。和やかな雰囲気の中,お二人の講師の先生に温かい拍手が贈られました。
【講師の先生のひとこと】
藤森裕治先生  
藤森裕治先生
 あらゆる学校種のなかで,日本の中学校は先生方にとって最も忙しく気が休まらない学校の一つではないでしょうか。そんな学校で毎日を過ごしておられる先生方に向けてのワークショップです。参加した後,明日もがんばろう,手が焼けるけれどかわいいところのある子どもたちと明日もつきあっていこうという思いで帰路につかれる先生方の後ろ姿を見送ることが,このワークショップを主催する者としての責任だと思っております。甲斐先生のしっとりとしたお話と,私からのやや脳天気な応援歌とがそのお役に立てれば幸いです。
甲斐利恵子先生  
甲斐利恵子先生
 授業で文学の作品を深く読めたなと思えたときは嬉しいものですが,深く読めればそれで力がついたと言えるのかということが心配でした。今回「系統性」というキーワードをもとに藤森先生やみなさんと考えることができ,大変有意義でした。ありがとうございました。