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 第5回大会のご報告

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「こえ」と「ことば」のレッスン2
 前回記念講演「『こえ』と『ことば』のレッスン」の第2弾です。今回は,主に「状況」と「ことば」の関係性,また,これから必要とされる「ことば」の力について,お話しくださいました。鴻上先生独自の視点から語られるお話と,ユーモアあふれる実演に熱く沸いた講座となりました。

特別講座の流れを紹介します。
「状況」と「ことば」
 
「状況」と「ことば」
 
「状況」と「ことば」
 冒頭,鴻上先生は,まず,ロシアのある演出家の演劇理論をご紹介くださいました。それによれば,人の生活の場には,次の三つの状況があるといいます。
  • 第1の輪…自分自身に意識が集中している状況。
  • 第2の輪…自分と相手とが向き合っている状況。
  • 第3の輪…自分と周りの人々とがいる状況。
 先生は,あるとき,これらの「状況」には,次のようなそれぞれに対応する「ことば」があるのではとお考えになったそうです。
  • 第1の輪…独り言
  • 第2の輪…「あなた」に向けて話すことば
  • 第3の輪…「みんな」に向けて話すことば
 こうした「状況」と「ことば」の関係について考える手がかりとして,先生は,ファーストフード店の接客マニュアルのことばはどうか? 嫁姑の会話は? 子供を叱る母親のことばは? など,さまざまな場面を迫真の実演を交えて挙げてくださいました。
自分のことばを意識する  
自分のことばを意識する
 では,ことばの達人になるためには,「状況」と「ことば」について,どのようなことを心がければよいのでしょうか。私たちは通常,第1〜第3の状況に応じたことばを使いますが,状況と「ずれた」ことばを使うことも数多くあります。例えば,意中の相手に向けて,第2の輪のことばで語り始めたものの,途中で独り言になってしまったり,一般的な話をしてしまったり……。
 先生は,まず大切なのは,こうした自分自身のことばの遷移を意識化することだとお教えくださいました。
状況とことばをコントロールする  
状況とことばをコントロールする
 さて,自身のことばの遷移を意識化すると,次には,それをコントロールする段階につながると先生はおっしゃいます。話の上手な人は,一つの場面でも,第1〜第3の輪のことばを巧みにコントロールして使い分けるというのです。
 例えば,結婚式のスピーチ。普通の人は第3の輪のことば(みんなに向けてのことば)で話します。しかし,話の上手な人を観察すると,第2の輪のことばで新郎に話しかけたり,また,独り言を交えているといいます。自身の言葉の遷移を意識し,それをコントロールする,その示唆にご参加の先生方も深くうなずかれていました。
「世間」と「社会」  
「世間」と「社会」
 次に,お話は,日本の現状,そしてこれから必要なことばについての考察に及びました。キーワードは「世間」「社会」です。先生は,「世間」とは,現在及び将来にわたり利害のある関係性であり,「社会」とは,各人が多様な在り方で存在し,利害のない関係性であると規定されました。そして,日本は,旧来「世間」を重視してきましたが,近年,「世間」というものが崩れつつあるとご指摘されました。
「社会」に語ることばの必要性  
「社会」に語ることばの必要性
 最後に,もはや,「世間」で通じるツーカーことばで語っても,「社会」には届かない,という問題提起がなされました。例えば,ネットに書き込まれる「世間」のことばは,決して「社会」には届かず,むしろ孤立化を深めるものであるとおっしゃいます。先生は,これから先,お互いが異なる(多様)という前提のうえで,自分のことを伝えることのできる「社会に語りかけることば」を身につけることが必要ではないかとご提案くださいました。
 子供たちの将来に必要なことばの力について,日夜考えられているご参加の先生方も深くうなずかれ,問題意識を新たにされているようでした。