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 第4回大会のご報告

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鼎談/活用力を育む国語の授業 ――全国学力・学習状況調査問題に学ぶ
「全国学力・学習状況調査」が実施されたのは,PISAなどのさまざまな調査によって,知識・技能を「活用する力」に課題があるとされたからです。そして,その「活用する力」を育成するための具体的な学習活動が「言語活動」です。
国語科における「言語活動」の授業づくりをするにあたって,同調査問題に何を学べばよいのか,3人の先生方にそれぞれのお立場からお話しいただきました。
   
はじめに,自己紹介も兼ねて,新しい学習指導要領への思いをうかがいました。
大きな期待 (冨山先生)  
大きな期待 (冨山先生)
三浦先生と私は,全国学力・学習状況調査にかかわり,前例がないなか国語教育へのさまざまな思いをこめて調査問題を作成しました。実は,全国学力・学習状況調査のスタートは,学習指導要領の改訂よりも早いのです。ですから,私たちが調査問題にこめた思いというのは,新しい学習指導要領にもつながっていると思っています。来春から小学校では新しい教科書が使われ,先生方は本格的に新しい学習指導要領に基づいた授業づくりをされることと思います。調査問題の作成,学習指導要領の改訂にかかわった身としては,とてもドキドキしておりますし,大きな期待をもっています。
何をすべきか改めて考えるとき(三浦先生)  
何をすべきか改めて考えるとき
(三浦先生)
私は昭和59年から13年間,山形県の中学校教師をしておりました。平成元年度版の学習指導要領のときには「新しい学力観」という言葉が出て非常に話題になったのを今でもよく覚えています。あれから20年。当時私たちが意識した課題というのは,どう乗り越えられたのだろうかと,改めて考えます。最近,「言語活動の充実」が話題になっていますが,新しいキーワードが出てくると,これまで話題になっていたことが消されていく風潮があります。本当の思考力・判断力・表現力を身につけさせるために,何をしなければならないのか。新しい学習指導要領の全面実施を機に,もう一度考えてみたいと思っています。
強いメッセージを受け取った(輿水先生)  
強いメッセージを受け取った(輿水先生)
学習指導要領が改訂されたとき,文部科学省が『生きる力』というパンフレットを,全国の家庭に配布しました。学習指導要領の改訂の趣旨を,すべての保護者に知らせるためです。私はこの冊子を,「今回の学習指導要領は,学校だけでなく,家庭や地域といった日常生活で生かせるような『活用力』を身につけさせたいのだ」という強いメッセージだと感じました。私は現場の校長ですので,そのメッセージを受け取り,今,まさに取り組みを進めているところです。
   
次に,「活用力」とはどのような力なのか,言語活動を国語科の授業のなかでどう具体化していくか,全国学力・学習調査を指導にどう生かすか,などをお話しいただきました。
正答のない課題に自分の考えをぶつける力 (三浦先生)

平成21年度 中学校「国語B」大問3

平成21年度 中学校「国語B」大問3
<<平成21年度 中学校「国語B」大問3>>
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正答のない課題に自分の考えをぶつける力 (三浦先生)
大学で学生に「国語の力にはどういうものがあるだろうか」などという質問をすると,みんな黙ってしまいます。積極的に発言する学生はまずいません。活用の力というのは,こういう正答のない場面に遭遇したときに,自分なりの見方や考え方をぶつけられる力なのかなと思います。自分で考え,判断し,表現する力です。
全国学力・学習状況調査の問題は,学校の授業をベースにしたものでなければならないと考え,作成しています。例えば,平成21年度中学校「国語B」の大問3は,子どものノートのイメージですね。これは詩を使ってこんな授業ができないだろうか,というメッセージをこめたつもりです。そして,最後の問いでは,5枚の写真の中から1枚選ばせて,自分の価値観に合わせた判断をさせるという場面をつくりました。どの写真を選んでもよいわけで,正答はありません。こういう問題は,「こんな学習活動を授業でやっていますか」という,先生方への問いかけでもありますし,「やってみてはいかがですか」という提案もこめています。
私たちが作成する問題は,全国の子どもたちに向けてのものですから,ぜひ先生方には,目の前の子どもたちの実態に合わせて,ふくらませたり,違うかたちに変えていったりして,うまく利用していただきたいと思います。
言語活動は「つけたい力」を明確に (冨山先生)
 
 
 
 
 
 
 
 
調査問題を実際に解いてみる (輿水先生)
 
言語活動は「つけたい力」を明確に
(冨山先生)
文部科学省が全国学力・学習状況調査を実施しているのには,大きく二つのねらいがあります。一つ目は全体の傾向をつかむこと,二つ目は個々の児童・生徒の学習状況をつかむことです。マスコミなどでは一つ目が注目されがちですが,二つ目のねらいを忘れないでいただきたいなと思います。それから,調査問題は毎年公表しています。その意味は,現場の先生方にこの問題を使って指導していただきたいからです。また,文部科学省のホームページでは「全国学力・学習状況調査の結果をふまえた授業アイディア例」 という資料を用意しています。こちらもぜひ活用していただきたいです。
今,「言語活動の充実」がとても話題になっていますが,「言語活動のための国語科の授業」になってしまっている実践が,ときどき見受けられます。言語活動を行う場合は,それによってつけたい力を明確にしなければなりません。例えば,「登場人物に手紙を書く」という活動をするなら,「なぜ手紙という形式にするのか」「手紙を書かせることでどんな力をつけさせたいのか」ということを,しっかり考える必要があると思います。まず,子どもたちに「つけたい力」が何か考え,それから,どういう言語活動が効果的なのか考えることが大切だと思います。
調査問題を実際に解いてみる (輿水先生)

平成21年度 小学校「国語B」大問1

平成21年度 小学校「国語B」大問1
<<平成21年度 小学校「国語B」大問1>>
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調査問題を実際に解いてみる
(輿水先生)
みなさん,調査問題をご覧になっているとは思いますが,実際に解いていらっしゃいますか。高学年の先生は解いていらっしゃる方も多いと思いますが,私は,ぜひ1〜6年まで全員の先生に解いていただきたいと思っています。
例えば,平成21年度小学校「国語B」の大問1。解いてみると,とても簡単な問題です。しかし,東京都の子どもたちの正答率は10%台と非常に低かったのです。驚きと同時に,なぜ子どもたちはこの問題につまずいたのか……と疑問が出てきます。それは,実際に解いてみないと感じることができません。この問題を解くにはどういう力が必要で,そのために低学年ではどういう指導が考えられるだろうか,と考え,分析していくことが,とても大切だと思います。調査問題は,授業改善のための一つの起爆剤になると思っています。ぜひ,解いて活用していただきたいです。
また,先ほど冨山先生が紹介してくださった「全国学力・学習状況調査の結果をふまえた授業アイディア例」は,とても充実した資料です。1ページでも2ページでも,時間を見つけて読んでいただきたいなと思います。
   
フロアとの質疑応答を行いました。
質問1
 
質問1
 
質問1:中学校の教師です。社会科の時間に生徒が作成した新聞を見たのですが,生徒が新聞の特徴や作り方を理解していないと感じました。そういう思いを国語科から,他教科の教師へどう伝えていけばよいのでしょうか。
・他教科の先生に「新聞づくりってこうですよ」と投げかけても,なかなか受け入れてもらえないかもしれません。そういうとき,私は自分の授業の振り返りとしてとらえ,国語科の授業のときに,新聞の特徴や作り方を子どもたちに教えるようにします。国語科は基幹教科ですから,他教科の土台づくりをしっかりしていきたいですね。
(三浦先生)

・校内研究を行うのも一つの手だと思います。言語活動をテーマにして全教科で取り組めば,他教科の先生方の意識も少しずつ変わっていくのではないでしょうか。(輿水先生)
質問2
 
質問2
 
質問2:発表したり,上手く話したりする子どもは多いのですが,表面的で内容が深くないと感じています。どのような指導をしていけばよいのでしょうか,
・言語活動を充実させていくときに,アウトプットだけでなく,インプットの指導をしっかり行う必要があるでしょう。例えば「報告する」という活動をする場合,報告する内容について整理して,どれを報告すべきか考えて構成する…そういうインプットも含めて「報告する」ということなんだよ,という指導をきちんと行わなければいけないと思います。(冨山先生)

・アウトプットの前の段階で止めて指導する,というやり方もあると思います。「自分の考えを導くためにどのような材料に注目しましたか」などと問いかけて,表現する前の段階に焦点をあてて指導してもよいかもしれません。(三浦先生)
   
最後に,今回のテーマにかかわるキーワードを,それぞれ挙げていただきました。
各先生のキーワード  
冨山先生
 「既習事項を活用しながら新たな力を身につける授業」

三浦先生
 「一気に変えようとしないこと」

輿水先生
 「授業者の意識化」

これらのキーワードが何を意味しているのか,今日のシンポジウムの内容をふまえて,参加された先生方ご自身で考えていただきたい……そう言って鼎談は締めくくられました。