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 第4回大会のご報告

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まとめの言葉/言語活動を支える三つの力
本大会におけるワークショップはもとより,各教科等の学習や日常生活で体験される言語活動の遂行には,意識されると否とにかかわらず不可欠の「力」があるはずです。それは多岐にわたるはずですが,ここでは全国学力・学習状況調査問題などを参照しつつ,「筋を見通す力」,「抽象/具体を往復する力」,「分類し意味づける力」,という三つを取り上げて提案します。
筋を見通す力  
筋を見通す力
1984年,立花隆氏の「知のソフトウェア」(講談社現代新書)という本が出ました。その中で,立花氏は次のように書いています。
「聞き取り取材において大事なことは,“聞くべきことを知っておくこと”である。これさえできれば,他は些末なことともいえる。」 これがすなわち「課題について見通しをもつ」ということでしょう。同様に,話し合いにおいては何が話し合われなければならないかを知っていること,書くときには,何を書かなければならないかを知っておくこと,これが「筋を見通す力」です。
過去4回の全国学力・学習状況調査の問題には,このような力を求めるものがいくつも見られます。
抽象/具体を往復する力  
抽象/具体を往復する力
話し合いにおいて,また日々の暮らしにおいて堂々巡りや葛藤状況を打破する力とは何か。昭和40年代に大村はま氏が中学2年生の1学期中間テスト用に作成された問題に次のようなものがあります。
クラス遠足の企画についての話し合いです。高尾山が提案されました。ところが,遠いしお金もかかるから,もっと近い所がいいという意見が出ました。どちらにも賛成者がいます。では,希望によって高尾山へ行く人と,もっと近い所へ行く人とにクラスを分けてはどうかという意見が出ました。(ここまでの話し合いの様子が書かれています。)「このとき,ある人がたいへんいい発言をしました。なんと言ったと思いますか。あなたが発言するつもりで書きましょう。」という問題です。
大村氏が想定した正解は「クラス遠足の意味をここで確認したいと思います。」です。
このような具体と抽象を往復する力こそが堂々巡りや葛藤からわたしたちを救うのであると考えると,わたしたちが日々の話し合いの指導で何を大切にしなければならないかが見えてきます。そのような力をつけようとしていると思われる問題が,過去4回の全国学力・学習状況調査にみられるのです。
分類し意味づける力  
分類し意味づける力
これは,「異なる線の引き方を意識する力」でもあります。例えば,PISA調査の結果について,2000年・2003年・2006年と,随分悲観的な論調しか見られませんでした。しかし,ここで線の引き方を変えてみる。すると,人口1億人以上の国において,この成果を維持しているのは日本だけだということが見えてきます。例えば上位にあるリヒテンシュタインの人口は34000人です。そこでの方法をそのまま日本で行おうなどとは,だれも考えないでしょう。なのに,ただただ1位から16位まで並べてしまうと元気をなくしてしまうということになります。
2009年小学校Bの問題がそうでした。最近の6年生は家の中の仕事をよくしているという立場から発表するという問題で,家の整理・掃除をどれぐらいするかという表があります。「いつもしている」「ときどきしている」「あまりしていない」「まったくしていない」。「いつもする」で線を引くと,20パーセントほどで,日本の子どもは五分の一しか家の手伝いをしないとなり,「ときどきする」までで線をひくと,過半数が手伝いをするとなります。
どこに線を引いて,つまりどのように分類して,そのことにどのように意味づけをするかが問われているのです。
分類し意味づける力   これらがインプットとアウトプット間のブラックボックス(午前中の鼎談の内容)において行われなければならない思考活動のうちの3種類だと受け止めることは可能でしょう。また,問い続ける技法(午前中の高木会長の基調講演の内容)を具体化した時の一つの方法と言えるのではないかと考えます。
このようなことを,今日の講演やワークショップを通じてよりいっそう深く考えた次第です。
 
この会も4回を数えるに至りました。会長もわたくしも深く感謝し感激しております。来年の第5回もほぼ開催が決まりました。また,みなさまとお会いできることを期待したいと思います。ありがとうございました。