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 第3回大会のご報告

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シンポジウム/国語科の言語活動はどうあるべきか
新しい学習指導要領では,全教科において言語活動を充実させることが求められています。このシンポジウムでは,国語科における「言語活動の充実」ということについて,3人の先生方と一緒に考えていきたいと思います。(田中先生)
田中先生  
◆はじめに,「言語活動の充実」についての基本的な考えを伺いました。
課題解決力に結びつく言語活動(冨山先生)

図解     ※ 図解画面をクリックすると,別ウインドウが開きます。
    
 
課題解決力に結びつく言語活動
(冨山先生)
言語活動を通して指導事項を指導するという規定,言語活動重視の姿勢は従来から変わっていません。ただ,新学習指導要領では,言語活動例が「内容」に入り,よりわかりやすい形になっています。 新学習指導要領で求めているのは,「課題解決をする力に結びつくような言語活動」です。子供達が,自ら考え積極的に物事に取り組むことができるようになるために,言語活動を充実させることは必要不可欠だと考えています。


「生きる力」と言語活動との結びつき(藤森先生)

【図】主体的な行為と言語活動力との関係 ※ 図解画面をクリックすると,別ウインドウが開きます。
 
「生きる力」と言語活動との結びつき
(藤森先生)
主体的な行為の中にはたくさんの知が詰まっています。こうした,行為を経験することの中に埋め込まれた知識や技能の総体を,「行為の中の知」と言います。言語活動中心の授業について,しばしば「活動あって学びなし」という批判がされることがありますが,その言語活動が主体的な行為であれば,そこには潜在的にたくさんの知が含まれているはずです。「行為の中の知」には,基礎的・基本的なものと,実践的なものがあります。言語活動として生徒が主体的な行為をすることは,この双方を育みます。そしてそれは,「生きる力」を育てることにもつながります。

言葉の力,国語科の使命(輿水先生)  
言葉の力,国語科の使命(輿水先生)
言葉は「生きる力」につながると同時に,人格形成の上でも非常に大きな力をもっていると思います。人は自分が獲得している言葉の範囲内でしか思考できません。語彙を広げること,深めること,言葉の使い方を習得すること──こういったことは,国語教室に託された非常に大きな使命です。 新学習指導要領では,今までも重視されてきた言語活動がさらに前面に出てきました。これによって,私たち教師の意識に印象づけられたという意味で,今回の改訂はたいへん意義のあるものだったと思っています。

◆次に,「言語活動の充実」にどのように取り組むべきか等,具体的なことについて伺いました。
「習得」と「交流」(輿水先生)  
「習得」と「交流」(輿水先生)
新学習指導要領において大切なことは二つあると思います。 一つは「習得」です。小学校では,基礎的・基本的な事項を単に履修させるだけでなく,必ず習得させて中学校へ上がらせるという意識が必要だと思います。小学校では低・中・高学年ごとに部会で研究し,お互いの流れを知らないままでいることがありますが,教師が縦の系列をしっかり知ることが必要です。 もう一つは「交流」です。交流とは,自分が思っていることをきちんと相手に伝え,相手の考えをしっかり受け止めることです。このような交流を,言語活動の中では必ず行わなければなりません。交流が,人格を形成することにもつながります。
「心」と「言葉」と「体」を動かす(藤森先生)  
「心」と「言葉」と「体」を動かす(藤森先生)
私は,高校の古典の授業で,生徒の日常生活や思い出等を「枕草子」にならって古文で書く活動や,「平家物語」の原文に忠実に塗り絵をする活動を行ったことがあります。生徒はこれらの活動を通して,古典が身近なものであるということを身をもって体験していたようです。友達と一緒に「心」と「言葉」と「体」を動かすということが,小学校から高校,また大学までにも共通する,学びの重要な要素だと思います。
指導案作成の手順(冨山先生)  
指導案作成の手順(冨山先生)
指導案を作る手順の一例をご紹介します。 指導案を作る時には,まず指導要領の目標と指導事項で,その学年がどんな力をつけようとしている学年であるか確認してください。次に,言語活動例を参考に,子供達が主体的に関わりやすい言語活動を設定してください。「学校図書館の利用者を増やすためにはどうしたらよいか」等,課題解決のプロセスを組み込んだものが理想的です。ただ,時数との関係上,こういった一まとまりの活動を想定しつつも,生徒に任せる部分,教師がしっかり教えて評価する部分,というように軽重をつけてもらえればと思います。

◆フロアとの質疑応答を行いました。
質問1:国語の授業を通して,日常の言語生活を耕すためには?  
質問1:国語の授業を通して,日常の言語生活を耕すためには?
光村の小学校国語の教科書冒頭には,「つづけてみよう」というページがあります。このページにあるような活動をしていただきたいと思います。その際,1年間全く同じことを続ければマンネリ化もするし,教師も「活動すればよい」というような姿勢になってしまいがちです。学期ごとにテーマを変える等の工夫をすることが大切です。(輿水先生)
質問2:活動を中心に授業を組む際の留意点とは?  
質問2:活動を中心に授業を組む際の留意点とは?
活動を通してどんな力を生徒に付けさせたいか,そのためにどのような工夫が必要かということを,事前にしっかり検討することが大切です。その検討なしに,単に生徒たちが生き生きしていたからよしとするのでは,教師の自己満足にしかなりません。
また,活動が終わった後に教師が評価するだけでなく,活動の中で生徒自身が「自分は今何をしているのか」「自分は今どんなことにつまずいているのか」といったことを自己評価できるようにすることも大切だと思います。(藤森先生)
質問3:言語活動を評価する際の観点とは?  
質問3:言語活動を評価する際の観点とは?
評価には,記録に残すものと残さないものがあります。生徒への声かけ等は記録に残さない評価です。一方,文部科学省が考えるところの記録に残す評価は,指導事項に基づいて行われるべきものです。例えば詩歌の創作作品を評価するときには,作品としての優劣ではなく,「描写を工夫して書いているか」等,指導事項に基づいた観点で行ってほしいと思います。(冨山先生)

◆最後に,「言語活動の充実」の課題・展望についてお伺いしました。
言語活動例の具体化を(冨山先生)  
言語活動例の具体化を(冨山先生)
新学習指導要領では,言語活動例が細かく決められていて窮屈な印象を受けるというご意見をいただくことがあります。確かに,従来大まかに示されていた部分が個別具体的になっていますが,「批評する」等の言語活動例はやはりまだ抽象的なものです。それを授業の形にまで具体化していただかなくてはなりません。あくまでも「例」なので,あまり縛られすぎずに様々な工夫をしていただきたいと思います。
言語活動を充実させるために(藤森先生)  
言語活動を充実させるために(藤森先生)
@生徒が「心」と「体」と「言葉」を動かすことができるような活動を用意すること。A授業の始めに,活動の目的と評価基準を生徒に伝えること。B授業中,教師も生徒も,活動内容等について言葉で整理・把握するよう意識すること。C授業の最後に,振り返りを丁寧に行うこと(「行為の中の知」の省察)。
これからの言語活動には,このようなことが必要だと思っています。
教師に求められること(輿水先生)  
教師に求められること(輿水先生)
小学校の利点は,教師が全科の教師であるということです。算数や理科の時間の活動が,国語のどの指導事項と結びついているかを教師が把握し,他教科とのつながりを,子供達に積極的に示していかなければならないと思います。 また,教師自身の言語センスも,子供達の学びには非常に大きな要素となります。私たち教師も,子供達とともに言葉の力を磨いていくことが求められています。
まとめ(田中先生)  
まとめ(田中先生)
言語活動の充実によって,子供達が言葉を通じてものを考えること,整理すること,伝え合うこと等に親しめば,それが日常の言語生活にも生きてきます。言語活動を充実させることは,「生きる力」にもつながるのだということを,今日は教えていただきました。
3人の先生方,どうもありがとうございました。