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 第3回大会のご報告

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今なぜ,言語活動の充実か
今回の学習指導要領改訂では,「言語活動の充実」が各教科等を貫く最も重要な改善の視点(中教審答申)とされました。「言語活動」は,これまでも国語科で行われてきたはずで,特別に新しいことではありません。では,今なぜ,それが強調されるのでしょうか,また国語科以外の教科でも重視されるのはどうしてなのでしょう。
基調講演では,「言語活動の充実」とはいったいどういうことか,背景となっている事情などを踏まえつつ,そのあるべき姿や意義について考えてまいります。
新学習指導要領改訂の柱は「言語活動の充実」  
新学習指導要領改訂の柱は
「言語活動の充実」
新学習指導要領全体をみても改訂の柱は「言語活動の充実」であり,その国語科的な表れが「言語活動例」です。これまでは「内容の取扱い」にあったものが,指導事項のあとに位置付き,格上げとなりました。そもそも言語活動とは,話す・聞く・書く・読むというこれまでも行われてきた活動であり,特に新奇なことではありません。では,現行の学習指導要領と新学習指導要領の違いは何かというと,例えば,ただ「文章を書く」のではなく,「立場を決めて意見を述べる文章を書く」というように,どういうふうに書くのかという,言語活動のプロセスが具体的,立体的に示されたということでしょう。
習得的な力も活用的な学習の中で身についていく

pp・6国語科の言語活動のモデル     ※画面をクリックすると別ウィンドウがひらきます。     
 
習得的な力も活用的な学習の中で
身についていく
本会の理事でもある黒田英津子先生のご実践(『情報リテラシー 言葉に立ち止まる国語の授業』高木まさき編著)を紹介します。ローベルの「お手紙」を読んで,人物造形を読み取りながら,「ふたりシリーズ」に読み広げ,そこから創作につなげていくというものです。このご実践では,読解で養った力を読書に生かし,さらに書くことに生かしていくこと,つまり,習得的な力を活用する中で身につけていくことになります。それを「国語科の言語活動モデル」として図示してみました。
今の教育現場の状況では,なかなか時間も余裕も確保するのが難しいと思いますが,「読むこと」教材の読解だけではなく,そこから実際に言葉を使う中で「気づき」が生まれたり,物語を書く過程で考えることや試行錯誤が生きてきたりします。そのようにして得ていくものがとても大きいと思います。言語活動を通して,最終的には表現する喜び,伝える喜びを味わってほしいと思います。

言語活動で学びのリソースをリンクさせる  
言語活動で学びのリソースをリンクさせる
旧来の国語科の学習は,教師が学習者に解説していく読解中心の学習でしたが,今は,情報,対象,他者といったものの中心に言語活動があるイメージでしょうか。いろいろなものをつなげていく中に葛藤やドラマが起きる,そういうイメージで言語活動を通した学習をとらえることができるのではないでしょうか。他教科とはどうリンクするのかというと,例えば社会科や理科で作ったレポートを国語科の学習材として,どうすればもっといいものにできるだろう,と考えるようなことですね。
大事なことは,活動に流れるのではなく,活動の中で何を指導するのかを明確にしておくことです。お話を作って遊んだ,みたいなことにならないように,そのお話をなぜ作らせるのか,どういう力をつけるのかを意識した授業が求められます。
改めて,今なぜ,言語活動か?  
改めて,今なぜ,言語活動か?
中教審答申が繰り返し述べていることが「思考力・判断力・表現力等の育成」ということであり,この中に出てくる「学習活動」という言葉が「言語活動」にあたります。その背景には,「知識基盤社会」の時代であること,「生きる力」,PISA,全国学力学習状況調査,文化審答申などさまざまなことがありますが,「言語活動の充実」ということは,1984〜87の臨教審のころからいわれてきたことであり,国語科だけのことではなく,各教科で充実させていくべきものなのです。
メリトクラシー(業績主義)からハイパー・メリトクラシーへ

メリトクラシー(業績主義)からハイパー・メリトクラシーへ     ※画面をクリックすると別ウインドウがひらきます。
    
 
メリトクラシー(業績主義)から
ハイパー・メリトクラシーへ
本田由紀氏はその著書(『多元化する「能力」と日本社会 ハイパー・メリトクラシー化のなかで』)で,従来型の学力と,今求められている学力とを分析しています。その考え方を私の言葉を加えて表にまとめたものと,図で示したものです。従来は,知識・技能など基礎学力をつけるような学習努力だけをしていればいいイメージでしたが,今は,従来とは違い,基礎学力・個性・創造性などを幅広く身につけていく時代となったと整理できます。言語活動を通してコミュニケーションしながら,失敗しながら,葛藤しながら,課題を発見したり,ネットワークを形成したりしていく時代であり,失敗したように見えても,そこから子供の「生きる力」につながっていく側面もある。基礎学力ももちろん大事ですし,そのまわりを取り巻く部分も生かしていくような授業作りが求められていると思います。

言語活動で学びを活性化する  
言語活動で学びを活性化する
まとめてまいりますが,先に紹介した黒田先生のご実践のような,読解から読書へ,読書から読解へ,という学びの活性化もあります。また,「カレーライス」や「走れメロス」の書き換え,創作活動をすることで読みが深まるということもあります。もう一つ,私は,ノートを活用すること,ノートを丁寧に作ることで書く力が十分つくのではないかと考えています。
言語活動で語彙を豊かに  
言語活動で語彙を豊かに
DSで読んだ漱石の「こころ」の感想文は書けるのに,文庫本で読むと書けなくなったという高校生の話があります。デジタル的なものと活字で読むのとは違うのでしょうか。もしも言語環境が変わってきたとするならば,なおさら,言葉を通して,言語活動を通して「想像力」を回復することは大事なことだと思います。
また,語彙指導も大事です。例えば,何かでつまずいているときに,言葉によって支えられるということがあります。言葉を知っているのと知らないのとではまったく違う。言葉を知っていることは,生きる力を高めることにもつながっていくのです。
言語活動を充実させることによって,狭い意味の学習だけではなく,いろいろな意味での新しい求められる力を,基礎学力を中心にしながら身につけていく可能性が広がっていくのだろうと思います。それをより効果的に,意味のある形で展開できるような考え方や手法を私たちは探っていくべきでしょう。

言語活動の意味と背景と,私たちが行っていくことの意義についてお話しさせていただきました。ご静聴ありがとうございました。